ムーンライトえちご

 そう言えば、近々ムーンライトえちごがなくなるらしい。ニュースか何かでやっていた。なくなると言っても完全になくなるわけでなく臨時便で存続するらしいが。
 ムーンライトえちごは夜行バスのようなキツイ思い出のたくさん詰まった列車だ。乗りたいとは思わないし、好き好んで乗るものでもないだろう。そういう列車なので嫌な思い出を上げれば結構な量になる。
 新宿駅で酔っ払って小便漏らしてゲロまみれのおじさんのすっぱい臭いが気になって横目で見ながらその列車を待つこともあったし、効きの悪い暖房に風邪を引いて急に車中で熱を出して嫌な汗をかいてみたり、よく分からないままその前の時間の在来線で高崎か前橋まで来てしまって終電になったため、ムーライトえちごに乗れれば何とかなると思って春夜、未だ寒いホームでまだ来ぬ電車を待ったり、乗り込んで着いたかなと目を覚ますとまだ長岡だったり、今度こそはと目を覚ますとまだ加茂とかだったり、何とか新潟に着いても朝早いものだから家まで交通手段がなくて重い荷物を持って徒歩で帰ってみたり。
 つけているのかつけていないのかはっきりしない空調と薄暗い照明と延々に続く線路の音に魘される、私に取ってムーンライトはそういう思い出に満ち溢れた列車だ。