ゴールデンスランパー

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

登場人物が自然と学生の頃の友人の姿に重なって、読後、ちょっとしんみり。
みんな元気にしているだろうか、久しぶりに連絡してみようか、という気持ちになれるお話。


話は間違いなく面白い。お勧め。
でも、不条理。
ハッピーエンドではない、これじゃ、闇の住人になるしかねーよなぁ、って終わり方。
俺が主人公なら八百屋する。


で、あー上手いな〜、おもったのが、時間軸の移動、構成の対比、登場人物の視座の変化。
つらつらと時間軸が1から10に進むような中で、主人公ベースの視点では物語の展開ってたぶん平面的。
現在過去未来の行ったり来たりとおなじエピソードでも人物の関わる視座の違いにより、
見たもの、聞いたもの、感じたことが違うわけで、それらを積み重ねてえがくことで出来事を示すのに立体感や奥行きを与えている。
あと、構成の対比。かなり緻密。
例えば、クリスマスの夜、学生時代の主人公らが後輩の家の前で嫌がらせしたときの後輩の取った態度と
現代、主人公が警察に追われてかくまってもらおうとした時に後輩が取った態度との違いなど、
一覧にするとどんだけあるんだよってくらいの数の対比があった。
そういうことの積み重ねて、話に重層感を与えている感じ。
で、自然、このエピソードはあのエピソードに似ているから、
そういえばどうだっけと読み返したりするわけで。


ちょっと軽くて感傷的かなぁ〜と思いつつも、
社会性もあるこの作家さんに興味を持った。