WJ19日目

d4132008-11-02

 盛岡ICに8時くらい。国道46号沿いのの気温計は軒並み1℃くらい。この前の水上と一週間くらしか違わないのだから、雫石もそんなに変わらないと思っていたら、認識が甘かった。通りのところどころで、枯れ葉我舞っている。1週間ほどの違いと言っても、場所も気候も違うんだから、当然温度も違うし、水温も違う。枯葉も舞うだろう。今は晩秋。そうこうすれば冬だ。雪囲いの時期。都会にいて、すっかり忘れていた。なめていたわけではないが、認識不足だった自分に反省。


 着替える前に、物は試しににプールに手を浸してみる。その瞬間、鈍くて重い冷たさに思わず息を飲む。それでもせっかく来たのだし、1日くらい飛ばないことには…と気を奮って、無料の1日券を購入(?)。なんだか分からないもの7枚とウエットスーツに着替え、水に入る。動いていればそのうちあつくなると思っていたがそれも認識不足。体が温まってスーツの水が温まるよりも早く、冷水に体が冷える。むろん、体が冷え切っているので上手く体が動かない。いや、動かせない。失敗が続くと、今度は上手くやろうと気持ちが急くがそれは気持ちだけで、あとはぼろぼろ。結局、何をしに行ったのか分からない感じの1日となる。この時期、せいぜい体力が持つのは2時間くらい。
 そんなこんなで、帰りの着替えのシャワー室で、一緒にいた人とウエットスーツ二枚重ねについて雑談。結論から言うと、もこもこ感は強く若干動きづらいけど寒さは防げること、寒くないから12月くらいまでイケルという話だった。この前のなんだかよく分からない物の重ね着なんかより、始めからそうすればよかったと後悔した。


 この日は、鶯宿温泉のホテル清光荘に泊まる。第一印象は、見た目がみすぼらしい。大丈夫かな…という感じ。背の高い車の駐車場がホテルの傍にないか探して玄関前をうろうろしていたら、ホテルの中から柄つきの割烹着を着た従業員のようなおばちゃんが出てきて、郵便局の隣の駐車場に止めるよう誘導。なんだかよく分からないまま、車をそこへ停めて、4,50メートルと今来た道を歩いてホテルに向かう。
 中では、小学校3年くらい男の子がロビーでコーヒーゼリー食って店番している。彼は私が中に入ると大きな声を出して、「お客が来たよ。」と、さっきのおばちゃんを呼んでいる。おばちゃんは訛りがきつくてよく聞き取れなかった。彼のはよく分かる標準語だ。
 フェルト敷きの赤い階段を上りきった正面が自分の部屋で、さっきのおばちゃんとは違う制服を着たおばちゃんに玄関から部屋まで誘導される。部屋は8畳ほどの広さ、ざっぱりした和室。金地に紅葉をあしらった絵をテレビの上に掲げている。昔、住んでいた実家のようで、始めての場所なのに前からいるような気になる。景色を見ようと障子戸を開けて、窓から外を見ると正面に渓流と紅葉が見える。なかなかいい部屋だと思う。
 着替えを済まして、早速風呂に入る。ロビーを抜けて大浴場へ向かう。早い時間なのでだれもいない。風呂の中で今日の宿について考える。
 何がなんだかよく分からないが、設備も人も古いホテルだけど、そういう仕様なのだと割り切ろうと考えた。だいいち1万もかからず泊まれて2食付きなんだからこれは破格だと考えてみると、案外悪くない。こういう古いところも昭和の趣があっていいと思えてくる。従業員のおばちゃんが従業員然としてなく、かえって潔い。田舎によくいる近所のおばちゃんだ。風呂から上がる時、小さい子供連れの親子と入れ違いになる。そうやって見れば、結構、お客さんも来ているわけで、呼び寄せるだけの魅力があることは、悪いところではなさそうだと思った。
 風呂から上がり、本を読んで過ごす。紀国の男之水門あたりでうとうとしだして船をこぎ始めると、さっきの制服のおばちゃんが食事の給仕に来る。大人の男の肩幅くらいの幅のお盆に皿が溢れるだけ料理を載せて、それでも乗せ足りない分は更にお盆を持ってきて、座卓の横へ。貝の酢の物だの、三宝焼きだの、たら鍋だ、茶碗蒸しだの、見ただけで、「あぁ、喰いきれない。」と、直感的にそう感じる量の夕食が目の前にある。しかも、おひつに茶碗で2杯分はある。「喰いきれない。しかし、ここで食べ残したら失礼だ。」と思い、食べた。そうやって食べるご飯は苦痛だけど、味は普通に美味しいから普通に美味いと思いながら最後まで食べれた。1万もかからないのに、こんなに料理がよくて、盛りも良くて大丈夫なのかなと、いなくなったおばちゃんに恐縮した。
 8時前に制服のおばちゃんが食器を片付けにきた。布団を敷いてもらって、雑談。昨日は、青森から団体のお客さんが着てたことやそのおきゃくさんらは今日、どこへ行ったのだろうといったどうでもいいことを話した。おばちゃんは気を使わなくてすむから、話が進んでいい。隣の部屋に泊まった子供連れの子供がないてうるさい。風呂場で入れ違いになった親子のところのだろうと思う。そのうち静かになる。旅疲れだろう。自分も眠くなったので寝る。